先日、宮城在住のお客様よりお便りが届きました。
なんでもご自宅の蔵の中から戦前の弁松の重箱が出て来たとのこと。
その重箱に当時の料理を再現してもらえないかというリクエストでした。
昭和10年ごろまでその方の曽祖父が日本橋の鰹節問屋で働いていたそうで、
そのお店に弁松が仕出しでお弁当を納めていたようなのです。
戦争前に宮城の方に引っ越しされて、以後約80年間この重箱は蔵の中で
眠っていたと思われます。
現物を拝見して驚いたのが、ほとんど新品で80年前のものとは思えません。


先に写真で見せていただいていたのですが、現物が届いてさらに驚いたのは
その大きさです。てっきり一人前サイズかと思っていたら、三人前は入ろうかという
スケールでした。

そして、実際に中に詰める内容を考えてみたのですが、あいにく戦前はどういうものを
入れていたのか正確なことが分かりません。空襲で焼けてしまって何も資料が残って
いないのです。
お客様にはあくまでイメージでの製作になる旨をお伝えし、いくつかご要望も伺って
こんな感じに詰め込みました。

多分、懐石弁当のように小皿を使ったりして適度に空間を開ければ一人前になるのでしょうが、
ぎっしりと詰め込むのが弁松の流儀なので、容赦なく詰め込まれました。
そのままでは寂しいので、三越でもらったふろしきに包んでみました。

そして、その日の午後にお客様がご到着、日本橋界隈を少しご案内して、この
重箱をお渡ししました。
貴重なものを拝見出来てよかったと思っていたら、翌日宿泊先まで取りに来て
もらえるならこの重箱を差し上げるとの、お客様からのまさかのお申し出が!
もちろん、ありがたく頂戴いたしました。
中身はあの量でしたので、お客様お一人ではとても完食は無理だったとのことです。
しかし、ご先祖の方が召し上がった甘辛の濃ゆい味を堪能いただけてよかったと
思います。
これは非常にレアなケースなのでしょうが、想像もしていなかった素敵なご縁に
感謝いたします。
今後は弁松の本店にて大切に保管させていただきます。
ありがとうございました。